相手を思いやることと、自分のエネルギーを守ることは両立できます
「もっと自分を大切にしたほうがいいですよ」
そう言われても、
「でも、相手のことを考えたら……」
「私が合わせればいいから」
「相手に嫌な思いをさせたくない」
そんなふうに考えてしまうことはありませんか?
人に優しくすること。
相手の気持ちを考えること。
誰かのために動くこと。
それは、とても素敵なことです。
だから私は、
「良い人をやめましょう」
とは思いません。
むしろ、思いやりのある優しさは、その人が持っている大切な魅力だと思っています。
ただ、一つだけ大切にしてほしいことがあります。
それは、
「相手を大切にすること」と「自分を後回しにすること」は、同じではない
ということです。
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以前、クライアントさんから、ご夫婦のお話を伺ったことがありました。
お話を聞いているうちに、私はなんだか心がほっこりしてしまったのです。
そのご夫婦は、生活リズムが少し違っていました。
奥様は朝型。
ご主人は夜型。
当然、眠る時間も起きる時間も少しずつ違います。
以前は、
「一緒に食事をしなくては」
と、お互いに相手に合わせようとしていたそうです。
でも、それを続けているうちに、
「本当は眠いのに、食事の時間を合わせなければ……」
「相手がまだ起きているから、自分も合わせなければ……」
そんな小さな無理が積み重なっていきました。
そこで、お二人は寝室を別々にすることにしました。
すると――
不思議なくらい、楽になったそうです。
「相手に合わせなければ」
というストレスがなくなった。
自分の眠りたい時間に眠ることができる。
相手も、自分のリズムで過ごせる。
一緒にいることだけが夫婦の形ではない。
そんなことを、お二人は少しずつ体感していったのだと思います。
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そして、もう一つ、とても可愛らしいお話をしてくださいました。
ご主人は、ご自宅の中でスマートフォンをどこに置いたのか、よくわからなくなってしまうそうです。
以前の奥様は、
「あ、また始まった!」
と、リビングなどを一緒に探していたそうです。
何度も続くと、
「どうしていつも私が探さなきゃいけないの?」
そんなストレスも、少しずつ溜まっていきますよね。
でも、今は違います。
スマートフォンを見つけると、奥様はご主人に手のひらを差し出して、
「お礼は?」
と、笑顔で冗談を言うそうです。
するとご主人も、
「はい!」
と、千円札を渡したり、
時には一万円札を渡したりする。
「えっ、こんなにくれるの?」
「一万円のときは、マジで嬉しい!」
と、奥様は笑いながら話してくださいました。
私はそのお話を聞きながら、
「なんて素敵なコミュニケーションなんだろう」
と思いました。
以前だったら、
「またスマホをなくしたの?」
「もう、自分でちゃんと置いておいてよ」
そんなふうにイライラしていたかもしれません。
でも今は、
「探す」という出来事そのものを、二人のちょっとした遊びに変えている。
もちろん、毎回一万円をもらえるわけではありません(笑)。
でも、そのやり取りの中に、
お二人なりの愛情とユーモアがあるのです。
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そして奥様が、こんなことをおっしゃっていました。
「こんなふうになるまでに、色々あったんです」
夫婦だからこそ、
近いからこそ、
言わなくてもわかってほしい。
自分ばかり我慢している。
相手もきっと我慢している。
そんな時期もあったそうです。
振り返ってみると、
「お互いに自分を我慢させていたんですよね」
と。
この言葉が、とても心に残りました。
相手のために我慢する。
相手に合わせる。
相手を思いやる。
一見すると、とても優しい行動です。
でも、それが長く続いて、
「私は本当はどうしたい?」
という自分の気持ちが置き去りになってしまうと、
いつの間にか、その優しさが「我慢」に変わってしまうことがあります。
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だからといって、
「我慢してきた自分はダメだった」
ということではありません。
そのときの二人には、
そのときの二人なりの愛情の形があったのだと思います。
「相手を大切にしたい」
「一緒に仲良く暮らしたい」
その思いがあったからこそ、合わせようとした。
でも、長い時間を一緒に過ごす中で、
「無理に合わせなくてもいいんじゃない?」
と、少しずつ気づいていった。
そして今は、
それぞれが自分のリズムを大切にしながら、
一緒にいるときは一緒に笑える。
そんな距離感が、とても心地いいそうです。
私は、このお話の中に、
「自分を大切にすること」と「相手を大切にすること」は両立できる
ということが、自然に表れているように感じました。
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夫婦だから、いつも一緒でなければいけない。
家族だから、同じ生活リズムでなければいけない。
好きな人だから、何でも合わせなければいけない。
そんな「こうあるべき」に縛られてしまうと、
本当は大切にしたい相手との関係が、苦しくなってしまうことがあります。
でも、
「私は朝型」
「あなたは夜型」
それぞれ違っていい。
「私はこうしたい」
「あなたはそうしたい」
それも違っていい。
違うからこそ、
お互いに心地よい距離を探していく。
それは、決して愛が薄れたということではありません。
むしろ、
相手を一人の人として尊重すること。
そして、
自分自身も一人の大切な人として尊重すること。
その両方なのだと思います。
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エネルギーという視点から見ても、
無理をしているときと、
「これでいい」と自分が納得しているときでは、
心や身体の感じ方は違います。
本当は眠いのに相手に合わせる。
本当は疲れているのに「大丈夫」と言う。
本当は嫌なのに「いいよ」と答える。
そうした小さな無理が積み重なると、
自分でも気づかないうちにエネルギーが消耗していくことがあります。
反対に、
「私はこうしたい」
「今日はこうするね」
と、自分の心と身体の声を尊重できると、
内側に少し余裕が生まれます。
その余裕があるからこそ、
相手にも優しくできる。
だから、
自分を大切にすることは、相手を大切にしないことではありません。
むしろ、自分のエネルギーを守ることが、
結果として人との関係を穏やかにしてくれることもあるのです。
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私自身も、これまでの人生の中で、
「相手のために」と思うあまり、
自分の気持ちを後回しにしてしまったことがありました。
そのときは、
「これくらい我慢するのは当たり前」
「相手を思えば仕方がない」
と思っていたこともあります。
でも、振り返ってみると、
自分の気持ちを大切にすることと、
相手を思いやることは、
どちらか一つを選ばなくてもよかったのだと気づきました。
そして今は、
「私はどうしたい?」
と、自分自身に問いかけることを以前より大切にしています。
自分の心に余裕があると、
人に向ける優しさも、無理のない自然なものになるからです。
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もし今、
誰かとの関係に疲れている方がいたら、
「もっと我慢しなければ」
と、自分を責めなくても大丈夫です。
「私は本当はどう感じている?」
「何が嫌だったのかな?」
「どうしたら、もう少し心地よく過ごせるかな?」
と、自分に聞いてあげてください。
すぐに答えが出なくても大丈夫。
長い間、自分より誰かを優先してきた方ほど、
自分の本当の気持ちがわからなくなっていることがあります。
だから、少しずつでいいのです。
無理なことを一つ減らす。
自分の好きな時間を大切にする。
疲れたら休む。
「今はできない」と伝える。
相手と少し距離を取ってみる。
そして、
「これくらいなら、お互いに心地いいね」
という場所を探していく。
それでいいのだと思います。
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先ほどのご夫婦は、
「今は、この距離感が居心地いいんです」
と、笑ってお話ししてくださいました。
その笑顔を見ていると、
夫婦の幸せの形は、
外から見える形だけではわからないのだな、と感じます。
同じ部屋で眠ること。
いつも一緒に食事をすること。
何でも一緒に行動すること。
それだけが「仲の良い夫婦」ではありません。
お互いが自分らしくいられて、
必要なときには笑い合えて、
困ったときには助け合えて、
そして、
「この人といると、なんだか心地いい」
と思えること。
もしかしたら、それも愛の一つの形なのかもしれません。
良い人をやめなくてもいい。
優しいあなたのままでいい。
相手を思いやる心も、そのままでいい。
ただ、
「私も大切」
ということを、忘れないでください。
相手も大切。
そして、私も大切。
どちらかを犠牲にしなくても、
二人が心地よくいられる場所は、きっと探していけます。
あなたの人生の中にも、
「我慢しなくても優しくいられる距離」
「無理をしなくても愛せる関係」
が、少しずつ見つかっていきますように。
そして何より、
あなた自身が、
あなたの一番身近な味方でいてあげられますように。